施設選びのコツ

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  1. 第2回 施設選びのコツ ~幸せ度を上げる~

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  1. 第1回 施設選びのコツ ~トップの考え方が一番大切~

第2回 施設選びのコツ ~幸せ度を上げる~

富士福祉経営マネジメント株式会社
福祉経営コンサルティング担当 中澤 司

 第1回目に「トップの考え方が一番大切」とお話ししました。今回は、トップがどのような考えで施設運営をしたら良いかを考えます。


「幸せ度」を上げる熱意ある考え・取り組みが必要

 有料老人ホームにご入居者される方の平均年齢は80歳前後が多く、65歳時の平均余命を見ますと男性85歳位・女性90歳位となります。何度もホームを変えることは体力・気力ともにエネルギーを使い簡単には出来ませんので、いわゆる「終の棲家」となると思います。
 自分の人生の最期となる「終の棲家」に、あなたなら何を望むでしょうか。きっと、穏やかな気持ちで自分の人生を振り返り、良いことも悪いことも詰まったページを閉じ、最後のページに「終わり良ければ・・・」と願い、心安らかな日々を楽しまれたいと思われるのではないでしょうか。

 心理学者エリク・H・エリクソンは人間の発達理論で、発達課題の達成に失敗すると危機がもたらされると唱えました。

第1段階(生後1年目)信頼 対 不信。
受けた養育の質によって、信頼感を持つか、恐れ・疑いを持つようになる。
第2段階(生後2~3年目)自律 対 疑惑。
自信を持つようになるが、過度の批判や制限により羞恥心や自分の適正さに対する疑惑の感覚を持つようになる。
第3段階(生後4~5年目)自発性 対 罪悪感。
自発的な知的活動・運動活動に周囲がどう対するかによって、自由や自発性、罪悪感が生まれる。
第4段階(生後6~11年目)勤勉 対 劣等感。
規則の定式化、体制化、秩序化などの勤勉性が生まれてくるが、結果につながらないと劣等感をもつこともある。
第5段階(12~18歳)同一性 対 役割の拡散。
他者とは異なる一貫した自分自身の同一性の確立と受容。同一性を発達させることができないと、自分は何者なのか混乱したり、社会的に受容されない役割(暴れ者など)を作り上げる。
第6段階(若青年期)親密感 対 孤独感。
家族以外の他者に対する性的、情緒的、道徳的親密度が持てないと、親密な人間関係からの孤独感が生じることがある。
第7段階(中年期)生殖性 対 自己耽溺。
家族や社会、次世代へと関心が広がっていく。このような将来への志向が発達しないと、自分の物的所有や身体的健康のことだけに関心をもつ。
第8段階(老年期)完全性 対 絶望。
生涯最後の段階で今までを振り返り、完全性の感覚で一生の成就を楽しむが、それが不満足で誤りのあったものであると、絶望に直面する。

 エリクソンが言うように、第8段階(老年期)を迎えた方は、完全性をお持ちの方から絶望を感じている方もいるのです。言い換えれば「十人十色」で、それぞれが幸せを願い頑張って来られたのです。
 完全性の方はきっと素敵な人生でしたでしょうし、最後の1ページも素敵に締めくくられると思います。しかし、絶望を感じておられる方は、それなりの1ページで良いのでしょうか。そんなことはありません。誰でも最後の1ページを素敵に締めくくる権利があります。
 そんな十人十色のご入居者様に配慮した素敵な時間を提供してくれるホームこそ、選ばれるホームであると思います。それには、絶望を感じておられる方をも含めた「幸せ度」を上げる熱意ある考え・取り組みがトップには必要であると考えます。

「幸せ度」を感じるために

 人は人生に何が起ころうと、「一定の幸せ度」を維持しようとし、幸せ度は「意識的に変えようとしなければ」いつまでも同じ値に留まると言われています。
 宝くじに当たった人を追跡調査した研究では、実際にくじに当たった幸運な人々は、いったん幸せ度を上げても、一年以内に元の値に下がっていました。同じ結果が、下半身麻痺になった人々にも見られました。最初は悲嘆に暮れていったん下がった幸せ度は、その後一年経つうちに、しだいに足が動かなくなる前の幸せ度まで再び上昇したのです。
 ミネソタ大学のデヴィッド・リッケンは、この「幸せ度」が生まれつき決まっているのか、それとも育った環境によって違ってくるのだろうか解明するために、別々の環境で育った一卵性を含む何千組もの双子を追跡調査しました。その結果、幸せ度を左右するのは「50%が後天的な要素」であるらしいことがわかりました。
 その結論が正しいと仮定するならば、いつも明るく暮らしている人も、常に暗く沈んでいる人も、人生のかなりの部分を経験によって変えられることになります。「財産」や「夫婦関係」や「仕事」といった環境要因は、幸せ度にたった10%しか影響を与えず、あと40%は、習慣的な考え方や気持ち、使う言葉や行動によって決まるということがわかってきました。つまり40%を変え、高めていくことによって、脳が生み出す「幸せ度」をコントロールすることができるのです。たとえ恵まれた環境に生まれなかったとしても、あとからその設定値を変えれば、どんどん幸せになれるのです。
 心理学によれば、人間の行動の少なくとも90%は習慣によるものだといいます。つまり、有料老人ホームにおいての「日々の習慣」によって、今よりもっと幸せ度を上げることができるのです。

 「脳と人間関係」の関連性として「ミラー・ニューロン」があります。これは「他人と自分の心を映し合う機能」をもった神経細胞です。この細胞によって、人間の脳は他人の行動を自分のことのように知覚することができます。たとえば、「アクビはうつる」です。
 また、誰かのために何かをすることを「利他的な行動」といいますが、この「利他的な行動」が実は大きな自分の喜びにつながる、という事実もあります。ミラー・ニューロンが「他人が喜びを感じている」という状態を想像すると、それを自分の喜びとして映し出すのです。他人と分かち合うと喜びはより大きくなるし、喜びを感じたときは、人と一緒に喜びたくなるからです。
 ホームの全職員が「利他的な行動」を取ることで、このニューロンの効果をいつもご入居者様と共有でき、「分かち合い」を日々実感できている習慣作りをしたら、いつも満ち足りた生活を送ることができ、ご入居者様・ご家族様・職員共々「幸せ度」が高い有料老人ホームとなります。
 それはトップの「利他的な行動」が職員に映し出され、職員からご入居者様やご家族に伝わるのです。ということはトップの考え方次第で、ハード・ソフトのすべてに映し出されることになります。
 「幸せ度」が高いホームは随所に感じられ、低いところも随所に見てとれるということです。パンフレット等の情報も大切ですが、施設見学の際に自分にとって良いか悪いか、ご自身の五感を信じて「感じる」気持ちを大切にして下さい。

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